使用の際は一度利用規約の確認をお願いいたします。

所要時間 10分ほど
あらすじ ようこそ、シルバークロウ社企画のゴーストバスツアーへ。このツアーでは500年前に存在した、「混沌の国」「血に塗られた国」と呼ばれたマリーゴ跡地を巡ります。この跡地ではゴーストたちに連れ去られてしまうことがありますのでどうぞお気をつけて……

一人称、ガイドの名前は自由に変えていただいて構いません。


  本日は、シルバークロウ社企画のゴーストバスツアーをご利用くださり、誠にありがとうございます。本日、ツアーガイドを務めさせていただきますのは私、【ジャック(メアリー)】です。今日一日だけのお付き合いにはなるかと思いますが……どうぞよろしくお願いいたします。


 ガイドを始めさせていただく前に、いくつか守っていただきたいことがございます。守って頂かなければ命を落としかねませんので、よくお聞きください。以前にもツアー参加者が1、2名、ある時なんかはバスごと行方をくらました事例もありますので……そんなバスツアーにご参加いただくとは、皆様本当に物好きというか、命知らずといいますか……


 コホン。改めまして。

まず一つ目。このバスツアーは500年ほど昔にあった混沌の国、マリーゴの跡地を巡るバスツアーです。様々な名所をバスで巡ります。途中停車などもいたしますが、ツアー中は決してバスを降りないようにお願いいたします。下手したらゴーストに連れ去られてしまいますので。


 二つ目。万が一バスから降りてしまった場合、そこにいる人や植物、生き物などには決して触れないようにお願いいたします。触れてしまうと、ゴーストがあなたに憑いてしまいます。

また、たまーに、このバスに、いつのまにかネコちゃんが乗り込んでしまうことがあるのですが、その子に関しても同様です。その子はおばけねこちゃんですので、決して触れないように。触れたらあなたに取り憑いて、不吉なものばかりを持ってくるようになります。不幸がお好きな方なら、何の問題もありませんけどね。


 それではガイドを始めさせていただきます。まずは混沌の国、マリーゴについて簡単にご説明いたします。


 先程も申しましたが、マリーゴは、500年前に存在した小さな国で、当時も「混沌の国」「血に塗られた国」などと言われていました。その理由は盗みやスリ、誘拐や殺人など、犯罪が横行していたことに由来します。マリーゴは政治家と、その親しい資本家たちによって牛耳られていました。彼らの都合の良い政策に、民衆の不満は年々大きくなっていき、犯罪も多くなっていったのです。マリーゴは、ついには民衆の反感を買い、滅亡の一途をたどりました。国家滅亡後、様々な建物の解体の計画が何度も上がりましたが、実現することはありませんでした。工事をしようとするたびに、作業員が不審な事故で命を落としたからです。犯罪の被害に遭われた方や、晩年に処刑されてしまった政治家たちの怨念が、今なお根強く残っているのでしょうね。


 さてそんなお話をしているうちに、最初の目的地へと到着いたしました。右手をご覧ください。ここはホテル・マリーゴ。政治家たち御用達の最高級ホテルの跡地です。このホテルではマリーゴでも指折りの事件が起きております。

 12月3日。ホテルも多くの客で賑わう中、ある1人の行商人がやってきます。彼はホテルにいる客に、珍しいお宝を売りつけました。見たことのない器や楽器……好奇心旺盛な金持ちたちは、行商人からお宝を買っていきました。そしてお宝を受け取った多くの金持ちたちは次々と倒れていきました。被害者は50名ほど。当時は呪われたお宝たちだなんて言われていましたが、近年の研究者たちの間では、品物に強力な毒が塗られていたのではないか、という説が濃厚です。それにしたって、なぜ行商人はそんなことをしたのか……未だ謎に包まれたままです。


 それでは、次の目的地へとバスを走らせていきますが……いなくなっている方はいませんか?それは良かった。それではガイドを続けさせていただきますね。


 そういえば、瓦礫の所々に血の跡が残っているのですが、気付かれた方はいらっしゃいますか?ああやっぱり。これだけの人数だと、目ざといお客様が1、2名ほどいらっしゃるんですよね。たまに外に、血みどろの男性の姿が見えるとか、鋭い目でこちらを睨んでいる女性がいるとか……そんなことを話すお客様もいらっしゃいます。今日はまだその報告はありませんね……今日の参加者様は、あまり霊感が強くないようですね。


 話が逸れました。街のあちこちに見える血の跡。これはこの国にいた連続殺人鬼、「ブラッティ・ジャクリーヌ」によるものだと言われております。夜な夜な街角で殺人を繰り返した彼女。ターゲットは決まって国を牛耳る政治家や資本家の男たちでした。当時、彼女は民衆の味方だと英雄視されたり、富豪たちが金を積んでて雇ったスパイなのでは?などと噂されたりしました。

彼女の正体は今尚、わからないまま。一体彼女は何者だったのでしょう?なんにせよ、この国が「血に塗られた国」と呼ばれるようになった原因の一つが、彼女だったことは間違いありません。


 さて、そんなお話をしているうちに次の目的地へと到着いたしました。左手をご覧ください。こちらはコブールスタ刑務所。跡地の大きさからわかるように、犯罪者の多い国だったマリーゴは、刑務所も立派です。犯罪者たちの脱獄を許さない、とんでもない仕掛けも施されていた、という話もあります。ここでは重罪犯が処刑されたのはもちろん、国家滅亡直前は、政治家たちの収容所とされ、民衆たちの手によって無惨な殺され方をされたと言われています。国家滅亡後、気味悪がった人々が何度も取り壊しの計画を立てましたが、やはりこちらも作業員の不自然な事故が続いたため、いつの間にやら計画は頓挫してしまい、現在に至ります。


 では、次の目的地に向かいますが……っておや。おばけねこちゃんが乗り込んできてしまいましたね。今日はこの辺りで引き返した方が良さそうです。皆様も、生きて帰りたいでしょう?安心してください。他のガイドはともかく、私は、乗客を誰1人として死なせたことのないという実績を持っておりますので。皆様、運が良かったですね。そうはいっても、帰るまで気を抜かないように。それでは、本日の集合場所まで、バスを走らせていきます。本日はご乗車いただき、誠にありがとうございました。


(了)