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所要時間 5分ほど
あらすじ 「あ、間違えた」夜の道で吸血鬼に襲われた俊也は相手の手違いにより吸血鬼になってしまう。血しか摂取できなくなった彼は幼馴染の綾乃に血を吸わせてもらっている。綾乃に好意を持つ俊也はいつもドギマギしてしまうが綾乃のほうは……

登場人物 

俊也(男)……高校2年生。夜道で吸血鬼に襲われ、間違いで吸血鬼の体にされてしまう。幼馴染のことが好きでアピールするも、なかなかその気持ちは届かない。

綾乃(女)……高校2年生。俊也の幼馴染。









俊也  『バイトからの帰り道。辺りはすっかり暗くなり、とても静かだ。そこに通りかかった1人の男。そのまま俺の横を通り過ぎるかと思ったが、男は俺の方に向き直った。何をされたのか・・・・・・首筋を噛まれた。一瞬、何が起きたか分からなかった。どうやら俺は血を吸われているらしい。彼は吸血鬼のようだ。吸血鬼が本当にいるなんて信じられなかったが。血を吸われているせいもあって、意識が遠のいていく。そんな中で聞いた彼の声。「あ、間違えた」』




(夜。俊也の部屋。俊也が幼馴染の首筋を噛み、血を吸っている。)

俊也 ぷはっ。

綾乃 ・・・・・

俊也 ・・・・・・わ、悪いな、こんなこと頼んじまって。

綾乃 いいよ。別に。

俊也 こんなこと頼めるの、お前しかいなくってさ。

綾乃 友達いないもんね

俊也 う、うるさいな。

綾乃 優しい幼馴染に感謝してよね。

俊也 ・・・・・・なあ。

綾乃 どうしたの?

俊也 お前はさ、なんというか・・・・・・恥ずかしくないの?

綾乃 何が?

俊也 何がって・・・・・・俺に血吸われるの。

綾乃 なんで?

俊也 なんで!?

綾乃 吸血鬼の吸血行為って、人間で言うところの食事でしょ?食事してて恥ずかしいって思うことがある?

俊也 いやないけど・・・・・・

綾乃 じゃあ恥ずかしいことないんてないじゃん?

俊也 いや人間の食事とは全然違うじゃん!?

綾乃 そもそも食べてるものが違うからね。

俊也 俺が言いたいのはそういうことじゃなくて!!

綾乃 違うの?

俊也 そう。俺が言いたいのはさ、血吸ってる時の距離。

綾乃 距離?

俊也 うん。気にならない?

綾乃 ・・・・・・別に。

俊也 本当に言ってる?だって首筋・・・・・・噛んでるんだよ?

綾乃 うん。

俊也 は、ハグの距離・・・・・・というかくっついてるけど?

綾乃 うん。

俊也 え?

綾乃 え?

俊也 なんかさ・・・・・・なんとも思わないの?

綾乃 別に?

俊也 だって俺たち、年頃の男女よ?自分でいうのもなんだけど。

綾乃 うん。

俊也 その・・・・・・どきどきとかさ・・・・・・しないの?

綾乃 ?別に・・・・・・

俊也 本当に?

綾乃 どうして嘘つくのよ。

俊也 男がこんな距離にいて平気なの?

綾乃 男って。俊君とは昔から知ってる仲じゃん。

俊也 まあ、そうなんだけど。

綾乃 今更そんなの、気にしないよ。

俊也 そ、そうか・・・・・・

綾乃 どうしたの?なんだかがっかりしてるような・・・・・・

俊也 あ、え・・・・・・そうかな?(小声)・・・・・・いや、どきどきしてるのこっちだけ?なんか少しでも緊張してくれてたら嬉しいとか・・・・・・自惚れだと思いつつも、なんかちょっとがっかりというか・・・・・・

綾乃 なにゴニョゴニョ言ってるの?

俊也 え?いや。なんでもないよ。

綾乃 そういえばさ。

俊也 あ、うん。なに?

綾乃 吸血鬼になって、変わったことある?

俊也 血を吸う他に?

綾乃 うん。

俊也 そうだね・・・・・・日差しが熱い。

綾乃 それは人間でもそうじゃない?

俊也 いや、人間だったときの比じゃないんだ。全身火傷するみたいに痛い。

綾乃 それ、日中動けないじゃん?どうしてるの?

俊也 今のところ仮病使って部屋に引きこもってる。いつまでも嘘もつけないし、どうにかしなきゃなーとは思ってるけど。

綾乃 なるほどね……

俊也 ……お前の方はどうなの?

綾乃 え?

俊也 俺が吸血鬼になって何か変わったところとか……

綾乃 うーん……血を吸うこと以外特に何も……

俊也 なんかさ、聞いたことない?

綾乃 何を?

俊也 吸血鬼はとても魅力的に見える……とか。

綾乃 あー、なんか小説とかで読んだことある気がする。

俊也 だからさ……俺のことも多少違って見えるんじゃ……ほらカッコよく……

綾乃 変わらないよ?

俊也 即答!!悲しい!!

綾乃 俊君は人間のときと変わらずかっこいいよ!

俊也 ・・・・・・(悶える)

綾乃 ん?どうしたの?

俊也 ねえ。それ、他の男に言ったりしてるの?

綾乃 それって、なんのこと?

俊也 あ、自覚ないのか。男の人に向かってカッコいいとか。

綾乃 ううん。言わないよ。

俊也 綾乃はさ、俺のことどう思ってるの?

綾乃 大事な幼馴染!

俊也 うーん……いやまあそうだろうなとは思ったけどさ!!いや、どうしてだよ!?じゃあどうしてそんな思わせぶりなこと言うわけ?

綾乃 どうしたの?

俊也 あ、え?いや・・・・・・なんでもないよ?

綾乃 変なの。あ、もしかしてこれも、吸血鬼になったせいなのかな?

俊也 ううん!それは違うかな!なんだったら人間の時とそんなに変わってない!!

綾乃 そうだった?

俊也 あ、うん・・・・・・まあ・・・・・・ね。

綾乃 それにしても迷惑な吸血鬼さんだよね。間違えて俊君を眷属にしちゃうとか。

俊也 全く。まさか自分が吸血鬼に襲われて、吸血鬼になっちまうなんて夢にも思わなかった。

綾乃 もしさ、今の俊君との間に子供ができたらその子も吸血鬼なのかな。

俊也 ケホケホ(咳き込む)

綾乃 ちょっと、大丈夫?

俊也 大丈夫じゃないよ!?何を急に言い出すと思ったら!!

綾乃 そんなに変なこと言った?

俊也 言った!え、もう一度聞くけど俺のことは?

綾乃 幼馴染!

俊也 うん。恋愛感情とかは?

綾乃 ない!

俊也 うん、そこまできっぱり言われちゃうと悲しいけどね。まあそうだよね。

綾乃 え?まさか子供どうこうの話でいやらしい想像しちゃったの?

俊也 ・・・・・・

綾乃 やだー。うぶだね。思春期真っ只中かな?

俊也 その通りだよ!てかお前も同い年だろうが!

綾乃 え?何言ってるの?私の方が俊君よりも2ヶ月お姉さんだよ.?

俊也 細かいな!それカウントしたところでお前も思春期ど真ん中だよ!

綾乃 それよりもさ。これからどうするの?

俊也 話の戻し方が唐突だな。

綾乃 だってこのまま吸血鬼なのも不便でしょ?日中お外出られないし。

俊也 まあ確かに?

綾乃 ご飯は私はどうにかしてあげるにしても・・・・・・

俊也 あ、そこは今後もどうにかしてくれるんだ。

綾乃 俊君ならいくらでも血吸わせてあげるよ?

俊也 うん。ありがとう。そこまでしてくれるのにどうして俺に気がないのかな?何?生理的に拒絶されてるの?・・・・・・でもそうだな。血を吸われるのも結構体に負担あるはずだし、いつまでもお前に頼りっぱなしってわけにもいかないだろうし・・・・・・

綾乃 え、私の体のこと、心配してくれるの?

俊也 当たり前だろ。ほら、俺だってお前のこと・・・・・・大事だからさ。

綾乃 あ、ありがとう。

俊也 ・・・・・・おっ、これはちょっとは男として見てくれたか?

綾乃 優しいよね!俊君。さすが私の幼馴染。

俊也 俺が幼馴染の枠を超えることはないのかな?

綾乃 俊君をどうにかして人間に戻す方法はないかな。

俊也 相変わらず話の戻し方が雑だよね!・・・・・・まあいいや。吸血鬼に詳しい人を探すか・・・・・・また、俺を噛んだ吸血鬼を探すしかないよな。あいつなら何か知ってるだろうし。

綾乃 眷属にしておいてほったらかしにするなんて薄情なやつ。

俊也 間違えたって言ってたしな。俺の存在は想定外だったんだろうさ。

綾乃 全く迷惑なやつ。許さないんだから!

俊也 俺のためにそんなに怒ってくれるの?

綾乃 あったりまえじゃない!いいわ!私が俊君を噛んだ吸血鬼を捕まえて、人間に戻す方法を聞き出してやるんだから!

俊也 綾乃・・・・・・

綾乃 だからそれまでは、私の血を吸って耐えてね。私が必ず、俊君を人間に戻してあげるからね。

俊也 ・・・・・・ああ!もう!!なんだそのかっこいいムーブ!!どうして俺の方が心乱されてるんだよぉぉ!!
(了)